頻脈とは
頻脈とは、脈が早くなることをいいます。
通常、脈は一定のリズムを刻んでおり、安静時1分間に50~100回、規則正しく打つ脈が正常とされています。しかし、なんらかの原因により脈のリズムが崩れてしまうことがあります。その状態を「不整脈」といいます。
不整脈には、次の3種類があります。
特に、心配なのは脈が速くなる頻脈です。
徐脈の症状を示す疾患にはさまざまなものがありますが、多くが心配ありません。また期外収縮も日常生活に支障がなければ基本的に治療の心配はありません。
しかし頻脈は、場合によっては命のリスクになることもあります。そのため、「危険な頻脈の症状」をいち早く察知することが大切です。
頻脈の症状は?
頻脈になると、次のような症状が見られます。
- 息切れ
- 動悸(心臓がドキドキする)
- 胸痛
- めまい
- 吐き気
- 立ちくらみ
- 失神、痙攣を伴う失神
- 虚脱感
脈拍が増えるに伴い、まずはドキドキという動悸が起こります。
すぐに治まることもありますが、さらに動悸がひどくなると、めまいや吐き気などが起こることがあります。
また失神を起こしたり、ときには痙攣を伴って失神したりすることもあります。
このような症状が一度でも見られたら、早めに専門医の診察を受けることをお勧めします。
頻脈の原因は?
一体なぜ、頻脈は起きるのでしょうか。
そもそも心臓の拍動は、心臓内の洞結節で作られる電気信号によってコントロールされています。洞結節では1分間に約70回、電気信号が作られています。
この電気信号が心臓内の電気回路を伝わり、心臓をリズミカルに収縮させたり、拡張させたりしています。しかし、なんらかの原因でこの電気信号に異常が起きると頻脈などの不整脈が発生します。
頻脈の主な原因
- 原因1・心疾患(狭心症、心筋梗塞など
- 原因2・高血圧
- 原因3・ホルモンバランスの乱れ
- 原因4・緊張、ストレス
- 原因5・アルコールやカフェインの大量摂取
- 原因6・薬の副作用
原因1・狭心症、心筋梗塞などの心疾患
狭心症、心筋梗塞、心不全、心筋症など、心疾患が原因となって頻脈が生じることがあります。
心臓の筋肉に栄養や酸素を補給している冠動脈が、動脈硬化や血栓などで狭くなると、狭心症や心筋梗塞を発症します。
これらの疾患を発症すると心臓の働きが弱くなったり、心筋が障害を受けたりします。
すると心臓が栄養や酸素不足の状態に陥り、心臓はますます拍動を速くして、一生懸命、栄養や酸素を取り込もうとします。
そのため、頻脈になってしまうのです。
原因2・高血圧
血圧が上がると、心臓は常に強い圧力をかけて血液を送り出さなければならなくなります。そのため、筋肉はどんどん厚くなって心肥大の状態となります。
また高血圧の状態が続くとやがて心臓は疲弊して、その結果、心臓の機能が低下して心不全を起こすこともあります。
心臓の機能が低下すると、心臓は全身へ血液や栄養を送り届けるために、もっと速く拍動を行うようになります。そのため、頻脈が発生します。
原因3・ホルモンバランスの乱れ
甲状腺機能亢進症や女性の更年期障害などにより、ホルモンバランスが乱れると、頻脈を発症することがあります。
甲状腺ホルモンは、心臓の収縮力を増強したり、心拍数を増やしたりする働きがあります。そのため、甲状腺が活発に活動し、血液中に甲状腺ホルモンを多く分泌する甲状腺機能亢進症を発症すると、頻脈になりやすいのです。
特に、頻脈のひとつ「心房細動」と甲状腺機能亢進症には深い関わりがあることが知られており、状腺機能亢進症11,309例のうち288例(2.5%)に心房細動の合併があった、という研究データもあります(*1)
また、女性の更年期には、女性ホルモンの分泌量が急激に低下します。そのため自律神経が乱れ、心臓の働きも不安定になって、頻脈が発生しやすいと考えられています。
(*1)公益財団法人日本心臓財団
原因4・緊張、ストレス
過度に緊張したり、身体的・精神的ストレスがかかったりすると、自律神経のバランスが乱れ、交感神経が優位になります。
交感神経が優位になると、人間の体は戦闘態勢に変わるため、心臓の拍動が速まり、血液が大量に全身を流れるようになります。
そのため、頻脈を発生しやすくなるのです。
原因5・アルコールやカフェインの大量摂取
アルコールやカフェインを大量に摂取した時も、頻脈になります。
アルコールの場合、吸収されたアルコールが分解されるとアセト・アルデヒドという物質になります。このアセト・アルデヒドは血管を広げ、脈を早める働きがあるため、頻脈を発生しやすくなります。
またカフェインにもアセト・アルデヒド同様、自律神経を刺激して心拍数を増加させたり、血圧を上昇させたりする働きがあり、その結果、頻脈を発生しやすくなるのです。
また喫煙も、タバコに含まれるニコチンによって自律神経が刺激され、頻脈を招くことがあります。
原因6・薬の副作用
たとえば、風邪薬や気管支喘息に使用される気管支拡張薬には動悸の副作用があり、頻脈を発生させるリスクがあることも。
そのほか、抗うつ薬・向精神薬、抗生物質・抗真菌薬、抗ウイルス・抗がん剤、免疫抑制剤、高脂血症薬、抗アレルギー薬、消化管運動改善薬、H2遮断薬などのなかにも、頻脈を起こしやすいものもあります。
また、単独で服用すれば問題なくとも、薬の飲み合わせなどで頻脈を発生させる場合もあります。
もし薬を服用していて、動悸や頻脈、息切れ、胸痛などの症状が見られる場合は、薬を処方した医師に相談するようにしましょう。
頻脈になったら気をつけるべきことは?
頻脈の治療法にはさまざまありますが、軽度の状態であれば、食事、運動、睡眠、禁煙など、生活習慣を見直すことで症状を軽減できる場合もあります。
また、ストレスをためない、カフェインやアルコールの取りすぎに注意する、といった日常の心がけも大切です。
生活習慣の改善だけで頻脈が改善しない場合には、投薬治療を行います。この場合、状態や症状に応じて、抗不整脈薬を使ったり、抗血栓薬と組み合わせて使ったりして、症状の改善を目指します。
しかし、それでも症状が改善せず日常生活に支障が及んでいる場合には、カテーテルアブレーション治療を行います。
カテーテルアブレーション治療とは、カテーテルと呼ばれる細い管を、足の付け根の血管から心臓へ挿入し、カテーテルの先端についている電極から電気を流して、心臓の組織を直接焼灼する治療法です。
不整脈の原因となる異常な電気信号を遮断することができるため、非常に治療効果が高く、特に近年では術式の進化が著しいため、高齢者でも安心して治療を受けることができます。
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頻脈、徐脈、期外収縮のなかで、特に危険度が高い頻脈。ストレスを感じたり、運動をしたりしたあとは、誰でも胸がドキドキしたり、心拍数が速くなったりするものです。
しかし安静にしているときでも頻脈が発生するのは、心臓からのSOSからもしれません。早めに循環器科や内科を訪れ、検査を受けるようにしましょう。
不整脈のことでお悩みでしたらご相談ください
現在では、医療技術の進歩や治療方法の多様化により、症状に合った治療を選ぶことができ、多くの不整脈が治癒可能になっています。
しかし、不整脈の中には突然死につながる危険なものもあり、その「前兆」に気づくことが非常に重要です。
健康診断で指摘を受けた方や、息切れ・胸痛・めまいなどの症状に悩まされている方は、まずは適切な診察を受けて、ご自身の不整脈の種類や程度を理解することから始めましょう。
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