「期外収縮」とは?健康診断で見つかる確率が高い不整脈
期外収縮とは、不整脈の一種です。
不整脈には「脈拍が異常に速くなる頻脈性不整脈」、「脈拍が異常に遅くなる徐脈性不整脈」、「時折、脈拍が飛ぶ期外収縮」の3種類があります。
期外収縮は、予期したときから外れて心臓が収縮するのでこの名前がついています。
期外収縮が起きると、正常で規則正しい脈拍の間に、ときどき早い脈が入り込みます。
「トン・トン・トン・トン・トン」と続くのが正常な脈拍だとしたら、期外収縮は「トン・ト・トン・トン・トン」となります。
健康診断などで行う心電図検査で、不整脈を指摘される人は少なくありません。
その多くが、この期外収縮です。
期外収縮は健康な人でも、30歳を過ぎるとほとんどの人に見られます。(*1)
実は、健康な人でも90%の人が不整脈を起こしているとされており、決して珍しい症状ではありません。
健康な人164人 (14~87歳) を対象として、心拍数や期外収縮の出現状況を調べた研究では、97%の人に期外収縮が認められています。(*2)
期外収縮が単発で起きたり、出現頻度が低かったりする場合には何の症状もなかったり、症状があるとしても軽微なものだったりして、日常生活のなかで見過ごされることも少なくありません。(*3)
しかし、期外収縮が連発したり、出現頻度が高くなったりすると、身体にさまざまな症状が現れます。
また、1日に1000発以上、期外収縮が起きている場合、そうでない人に比べて、心血管死亡や突然死のリスクが3倍に上昇するという研究結果もあります。(*4) そのため、「期外収縮は心配不要」と安易に考えることは危険であり、なかには命のリスクになるものもある、ということを覚えておく必要があります。
(*1)国立研究開発法人国立循環器病研究センター
(*2)一般社団法人日本不整脈心電学会「心電図1991 年 11 巻 2 号 p. 174-182
(*3)日本循環器学会 / 日本不整脈心電学会合同ガイドライン「2022 年改訂版 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン
(*4) Am J Cardiol. 1987;60:1036
心疾患や生活習慣など、期外収縮が起きるさまざまな原因
期外収縮が起きる原因はさまざまあります。 大きく分けて以下の3つに分類されます。
- 心疾患を原因とする期外収縮
- 心疾患以外の疾患を原因とする期外収縮
- 自律神経の乱れを原因とする期外収縮
1.心疾患を原因とする期外収縮
心臓弁膜症、心筋梗塞、狭心症、心筋症など心臓の病気があると、期外収縮を起こしやすくなります。
2.心疾患以外の疾患を原因とする期外収縮
肺疾患や高血圧があると、期外収縮を起こしやすくなります。
3.自律神経の乱れを原因とする期外収縮
コーヒーなどカフェインを含む飲料の取り過ぎ、飲酒、喫煙、ストレス、過労、睡眠不足なども期外収縮の原因となります。
そのほか、風邪薬や喘息薬などに用いられる気管支拡張剤には、動悸の副作用があり、期外収縮を発生させることがあるので注意が必要です。(*5)
これらのうち、「3.自律神経の乱れを原因とする期外収縮」であり、かつ、自覚症状がなければ、それほど心配はいりません。
その反対に、特に気をつけたいのは「1.心疾患を原因とする期外収縮」です。
心疾患と合併して期外収縮が起きると危険な状態を招くこともあるので、注意が必要です。
なお、期外収縮には「不整脈がどこで発生しているか」の違いによって、次の2つに分類されます。
- 期外収縮を起こしている場所が心房(心臓の上の部屋) 心房性期外収縮(上室性期外収縮)
- 期外収縮を起こしている場所が心室(心臓の下の部屋) 心室性期外収縮
これらのうち、注意が必要なのは心室性期外収縮。
心室性期外収縮の一部は、心疾患を原因として発生している場合があるので、場合によっては突然死につながる可能性もあります。
一方、心房性期外収縮の場合、良性の不整脈とも言われ、特に自覚症状がなければほとんど治療の必要はないとされています。(*6)
期外収縮の主な症状。「めまい」と「失神」は予後不良のサイン
期外収縮になると、どのような症状が現れるのでしょうか。
代表的なものを挙げてみましょう。
- 胸がドキドキする(動悸)
- 胸が一瞬つまずく
- 胸がつまる
- 胸に空気が入ったような感じ
期外収縮が連続して出現したときは一時的に血圧が下がって、めまいや動悸などの症状が現れることもあります。
また、心室性期外収縮を発症すると、以下のような症状が現れることもあります。
- 動悸
- 息切れ
- めまい
- 失神
これらのうち、特に気をつけたいのはめまいと失神。これらは予後不良のサインとされており、できるだけ早く治療が必要になります。
しかし、こうした自覚症状がほとんどないにもかかわらず、健康診断などで期外収縮を指摘される人も少なくありません。
そのまま放置してしまう人も多いのですが、心臓病を起源とする期外収縮など危険なケースもあるため、自覚症状がなくても検査を受けることをおすすめします。
期外収縮と指摘されたときの検査や診断の進め方
健康診断などで行われる、一般的な心電図検査は「12誘導心電図」というものです。
これは、心臓で起きている電気活動を波形として示すもので、心電図の基本形。
1 回の検査で12 種類の波形かを得ることができ、標準波との違いによって、疾患の診断や予測が可能になります。
健康診断などで12誘導心電図を受け、期外収縮の可能性が指摘された場合には、専門医を受診して、さらに詳細な検査を受けることになります。
12誘導心電図よりも、さらに精密に期外収縮の状況を知ることができるものに「ホルター心電図」があります。
これは、24時間心電図を記録するもの。
期外収縮が1日当たりどれくらい起きているのか、単発か連発か(期外収縮が止まらない)、1種類か複数種類かなど詳しい情報を得ることができます。
また、期外収縮の原因が心疾患にあると疑われる場合には、胸部レントゲンや心エコーの検査を行って、器質的心疾患がないかどうか、確認する必要があります。
期外収縮の治し方は「薬物療法」と「カテーテルアブレーション」
期外収縮と診断された場合には、まず、治療の有無を確認します。
原因となる心疾患がなく、自覚症状もない場合には、一般的に治療は不要とされています。
ただし、ストレスや過労、不眠、アルコール、喫煙などが期外収縮を悪化させることがあるため、健康的な生活を送ることを意識しましょう。
期外収縮があるとそのことが気になってしまい、ストレスや不安が増大し、ますます期外収縮を悪化させる場合があります。
そうした悪循環を起こさないためにも、「必要以上に気にしない」ことも大切です。
原因となる心疾患がある場合には、それらの治療を優先して行います。
心疾患を治療することで期外収縮が改善される場合も少なくありません。
しかし、心疾患の治療に加えて期外収縮の治療が必要な場合には、同時に進めることもあります。
期外収縮の治療法は、主に、次の2つに分類されます。
- 薬物療法
- カテーテルアブレーション
薬物療法
βブロッカー(ビソプロロール、アテノロール等)、ワソラン、ヘルベッサー、抗不整脈薬などを用いて、動悸やめまいなど不快な症状を軽減する。
カテーテルアブレーション
カテーテルという医療用の細い管を心臓内に挿入して、不整脈のもととなる異常な部分に高周波電流を流し、アブレーション(焼灼)を行う。不整脈の起源を根本的に消滅させるため、根治が期待できる。
現在、カテーテルアブレーションの技術はめざましく進化しており、低侵襲(体への負担が少ない)での治療が可能になっています。
そのため、高齢者でも安心して受けられる治療法として注目されています。
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期外収縮を検査・治療するには、どんな病院を受診するべき?
期外収縮は24時間のうち、いつ、どのタイミングで発生するかわかりません。
そのため、健康診断でたまたま見つかった人もいれば、たまたま見つからなかったという人もいます。
そのため、心電図検査で「異常なし」と言われても油断せず、定期的に検査を受けることが必要です。
また、健康診断で期外収縮を指摘されても、「特に自覚症状がない」として、詳細な検査を受けない人もいます。
しかし、検査や治療の必要性を自己判断するのはとても危険なこと。
万が一、心筋梗塞や狭心症など心疾患が原因となって期外収縮を発生している場合には、危険な不整脈に進行してしまう場合もあります。
そのため、健康診断で一度でも期外収縮を指摘されたら精密検査を受けるようにしましょう。
精密検査を受けるときには、必ず、循環器あるいは不整脈の専門医を受診すること。
心電図を詳細に読み取り、不整脈を正しく診断することは、専門医でも高度な技術が必要です。
そのため不整脈の専門医あるいは循環器の専門医を受診するようにしましょう。
万一、自宅近辺にそうした医師を見つけられない場合には、かかりつけ医に紹介状を書いてもらうと良いでしょう。
まとめ
「期外収縮は多くの人に見られる不整脈」とはいえ、なかには危険性の高い期外収縮もあります。
「病院へ行かなくても大丈夫」と自己判断せず、必ず検査を受けるようにしましょう。
また、病院では症状の有無や、症状がある場合にはいつ、どんなときに、どんな症状が起きるのかなど、詳しく伝えるようにしましょう。
不整脈のことでお悩みでしたらご相談ください
現在では、医療技術の進歩や治療方法の多様化により、症状に合った治療を選ぶことができ、多くの不整脈が治癒可能になっています。
しかし、不整脈の中には突然死につながる危険なものもあり、その「前兆」に気づくことが非常に重要です。
健康診断で指摘を受けた方、息切れ・胸痛・めまいなどの症状に悩まされている方など、まずは適切な診察を受け、ご自身の不整脈の種類や程度を理解することから始めましょう。
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