不整脈の治療法について
不整脈とは、「脈が速く打つ」「ゆっくり打つ」「不規則に打つ」などの状態を言います。
不整脈にはさまざまな種類があり、一般的に次のように分類されます。
- 頻脈性不整脈 1分間に脈が100以上(心房細動、心室細動など)
- 徐脈性不整脈 1分間に脈が50以下(洞不全症候群、房室ブロックなど)
- 期外収縮 規則正しい脈に混ざって、ときどき速い脈が入り込む(上室性期外収縮、心室性期外収縮など)
健康診断などで心電図検査を行うと、多くの人に不整脈が見つかります。
不整脈が起きると、動悸や息切れ、めまい、失神などいろいろな症状が現れますが、なかにはこうした症状がまったくない場合も多く、「健康診断で心電図が見つかって初めて気づく」ということも少なくありません。
実際、健康な人でも90%以上が不整脈を起こしているとされています。
健康診断で見つかる不整脈は、多くが上室性期外収縮や心室性期外収縮で、ほとんどが無症状です。
無症状の場合には治療の必要がないとされることも多いのですが、なかには無症状のまま進行し、危険な状態に至ることもあります。
その不整脈が治療を必要とするかどうか、正確に判断するために、不整脈と診断されたら必ず精密検査を受けるようにしましょう。
不整脈の治療法はさまざまあり、不整脈の種類や重症度などに応じて、選択します。
なかには致死性の不整脈もあり、放置すると命のリスクになることもあるため、治療が必要と診断された場合には速やかに治療を開始することが大切です。
〈不整脈の治療方法〉
- 薬物療法
- 手術療法
- 生活習慣の改善
1.不整脈の薬物療法
不整脈の保存療法のひとつに薬物療法があります。
これは薬物を投与することによって、動悸や息切れ、めまいなど不整脈による不快な症状を軽減するもの。
近年では抗不整脈薬の研究が進み、エビデンスに基づいて明確なガイドラインが整備されています。
そのため、従来と比較して抗不整脈薬を服用することで、不整脈を停止したり、発症を予防したりするのはもちろん、患者の予後やQOLの改善にも効果が期待できるとされています。(*1)
しかし、「薬で不整脈が治るのか?」というと、難しいと言わざるをえません。
あくまでも薬物療法は対症療法の位置づけであり、根本的に不整脈を根治するものではないということに注意が必要です。
(*1)日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同ガイドライン「2020年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン」
薬物療法が用いられるのは、主に、頻脈性不整脈です。
頻脈性不整脈の治療薬には、次の3つがあります。
- 心拍数を遅くする薬(βブロッカー、カルシウム拮抗薬、ジギタリス製剤など)
- 不整脈を起こさないようにする薬(ピルジカイニド、フレカイニド、プロパフェノン、シベンゾリン、ベプリジル、アミオダロンなど)
- 血液を凝固させずサラサラにする薬(ワーファリン、DOACなど)
ただし、「2.不整脈を起こさないようにする薬」は重篤な副作用をもたらすリスクがあるため、近年では積極的に用いられていません。
また、期外収縮の治療に対しては、通常上室期外収縮は治療の必要はないとされており、「QOLを損なう場合には安全性とのバランスを考慮しながら薬物療法を行う」とガイドラインによって定められています。
一方、心室性期外収縮は、重篤な不整脈を引き起こすリスクがあることから、必要に応じて心拍数を遅くする薬が用いられます。(*2)
(*2)日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同ガイドライン「2020年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン」
2.不整脈の手術療法
不整脈の症状が深刻でありQOLが著しく低下していたり、致死性の不整脈である場合などには、手術療法が選択されます。
手術療法には、主に以下の3つがあります。
- カテーテルアブレーション
- ペースメーカー移植術
- 埋め込み型除細動器(ICD)
・カテーテルアブレーション
カテーテルとは、医療用として用いられる細い管のことで、アブレーションとは、「焼灼する」という意味。
つまりカテーテルアブレーションとは、不整脈を引き起こす異常な心臓内の局所をカテーテルで焼灼して、正常の脈を取り戻す治療のことを言います。
カテーテルアブレーションはメスを使わない手術で、頻脈性不整脈の多くと、期外収縮を対象に行われます。
手術は全身麻酔または局所麻酔によって行われ、足の付け根などからカテーテルを体内に挿入し、レントゲンで透視しながら、カテーテルの先端を心臓まで進めます。
そして、手術中に不整脈を誘発してその実態を詳細に把握し、ただちに原因となっている心筋を焼灼します。
不整脈の元凶を解消することができるため、不整脈の根治をめざすことができるのです。
近年ではカテーテルアブレーションの医療技術が非常に進化し、低侵襲(体への負担が少ない)の術式が確立されており、治療成績も良いことから、高齢者でも安心して受けられるようになりました。
ただし、合併症や術後再発のリスクがあるため、治療実績が豊富であり、信頼できる医師を選ぶことが必要になります。
・ペースメーカー移植術
人工的に電気刺激を与え、心臓のポンプ機能が停止することを予防するための医療機器のことをペースメーカーといいます。(*3)
このペースメーカーを体内に埋め込み、心拍を正常に保ちます。主に徐脈性頻脈に対いて用いられる治療法です。
近年では非常に小型軽量化しており、日常生活に与える不便も少なくなってきました。しかし植え込み手術による出血、感染のリスクがあるほか、電池の寿命に際して再手術を行い、ペースメーカーを交換する必要があります。
・埋め込み型除細動器(ICD)
除細動器とは、痙攣(細動)を起こしている心臓に電気ショックを与え、正常な心拍に戻す医療機器のこと。
これを体内に埋め込むことで、心室細動や心室頻拍など、致死性の不整脈による突然死を防ぐのが「埋め込み型除細動器」です。
埋め込み型除細動器はペースメーカーの機能も持っており、心拍に異常が起きると、あらかじめ設定しておいたプログラムに従い、心拍を整えることができます。
たとえ患者が眠っている間でも、除細動器は絶えず心拍を検知し続けているため、突然死の予防に多大な効果が期待できます。(*4)
ただし、ペースメーカー同様、電池の寿命に際して再手術が必要になるほか、込み手術による出血、感染のリスクがあります。
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3.不整脈疾患に対する生活習慣の改善
「命に関わるリスクが低い」「ほとんど自覚症状がない」など、危険性の低い不整脈の場合には、生活習慣を見直すことで不整脈を改善することが可能です。
特に気をつけたいのは、以下のことです。
- ストレス
- 過労
- 睡眠不足
- アルコールやコーヒーの多飲
- 喫煙
- 肥満
- 高血圧
これらは不整脈の原因となりうる危険因子。なぜこれらが不整脈を招くのかというと、心臓は交感神経によって制御されており、ストレスや過労、睡眠不足が続くと交感神経が過剰に優位になって、心拍が速くなるなど不整脈を引き起こすから。
また、肥満や高血圧も心臓に負担をかけ、不整脈を招くことがあるため注意が必要です。
こうしたことに気をつけ、食事内容や生活習慣を見直すことが、自力で不整脈を改善したり、予防したりすることにつながります。
不整脈の治療後の注意点とは?
不整脈の原因にはさまざまあり、心筋梗塞や心筋症などの心疾患が不整脈の発症に関与していたり、肺疾患や甲状腺疾患なども不整脈の危険因子になったりします。
そのため薬物療法や手術療法などで不整脈を治療する場合には、まず、これらの疾患の治療を優先して行うことが、速やかな治癒につながります。
薬物療法や手術療法を行ったあとも、これらの疾患の再発予防に努めるとともに、健康的な日常生活の維持を心がけることが必要。
また、不整脈の予防法としては、定期的に心電図検査を受けることが一番。
特に、心疾患の既往がある、ストレスが多い、肥満である、など不整脈の危険因子を多く持っている人は積極的に検査を受けましょう。
まとめ
不整脈は決して珍しい疾患ではありません。
しかし、なかには致死性の不整脈もあり、不整脈による突然死で命を落とす人も少なくありません。
健診で不整脈を指摘され、治療が必要とされた場合には速やかに専門医の診察を受け、治療を開始するようにしましょう。
不整脈のことでお悩みでしたらご相談ください
現在では、医療技術の進歩や治療方法の多様化により、症状に合った治療を選ぶことができ、多くの不整脈が治癒可能になっています。
しかし、不整脈の中には突然死につながる危険なものもあり、その「前兆」に気づくことが非常に重要です。
健康診断で指摘を受けた方や、息切れ・胸痛・めまいなどの症状に悩まされている方は、まずは適切な診察を受けて、ご自身の不整脈の種類や程度を理解することから始めましょう。
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