不整脈の症状がある病気とは
不整脈とは、脈の速さ(心拍の速さ)が正常でなくなることをいいます。
心臓は電気的興奮によって拍動を続けており、それによって全身へ血液を送り出しています。
本来、拍動は規則正しいリズムにのって行われるのですが、何らかの原因により、電気的興奮のリズムが異常になります。この状態を「不整脈」といいます。
大きく分けて、不整脈は3つのタイプに分類されます。
間違いやすいのですが、「不整脈」というものは病名ではありません。
不整脈とは、脈の異常を引き起こす病態の総称のことであり、頻脈性不整脈や徐脈性不整脈、期外収縮を引き起こす疾患にはさまざまなものがあります。(*1)
次から代表的な病名について、概要を解説します。
(*1)公益財団法人 日本心臓財団
1.頻脈性不整脈
頻脈性不整脈とは、正常な状態よりも心拍が速くなることをいいます。
具体的には、1分間の心拍が100回以上になると頻脈と診断されます。頻脈性の不整脈を発症すると、「ドキドキする」「胸が苦しい」などの症状が出ることがあります。
そのほか、主に次のような症状が現れます。
- 動悸
- 息切れ
- 胸痛
- めまい
- 失神
頻脈性不整脈の代表的な疾患
頻脈性不整脈には、以下の一覧のような疾患があります。
- 心房細動/心房粗動
- 心室頻拍
- 上室頻拍
- 心室細動
・心房細動/心房粗動
治療すべき不整脈のなかでもっとも頻度が多いもの。
心臓の心房が非常に速い頻度で興奮し、小刻みに震えて痙攣する。
そのため心拍のリズムの規則性は完全に失われ、心拍数は40〜230拍/分に変動する。
心室も連携して動かなくなるため、心臓のなかで血液が淀んで血栓ができやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こすリスクが高くなる。
心房での電気的活動の調和は取れているが、非常に速く拍動するものを心房粗動という。
・心室頻拍
心室に起源を持つ不整脈。
1分間に100回以上の電気刺激を規則正しく発生する起源や回路が出来て起こる頻拍発作。
心筋梗塞や心筋症などの基礎心疾患によって、心室筋がダメージを受けて発症する場合と、明らかな原因がない場合がある。
基礎心疾患があり心機能の低下が著しい場合には、突然死のリスクが高くなる。
・上室頻拍
上室とは心房のことであり、心房内で起きた頻拍を上室頻拍という。
心拍数は1分間に150~250回程度と通常より速くなるのが特徴。(*2)
心房頻拍、WPW 症候群、房室結節エントリー性頻拍などがある。
(*2) 千葉大学大学院医学研究院循環器内科学
・心室細動
心室細動とは不整脈のなかでもっとも危険度の高いもののひとつ。
心室において、無秩序な興奮が多数生じ、心室が痙攣を起こして血液を送り出せなくなり、心停止状態となる。
致死率が高く、心臓が原因の突然死の多くは、この心室細動によるものとされている。(*3)
心筋梗塞などの既往がある人がまず心室頻拍を起こし、その後、心室細動に至ることもある。
一方、健康な人に起こりうる心室細動の一例として、特発性心室細動、QT延長症候群、ブルガダ症候群がある。
(*3)公益財団法人 日本心臓財団
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2.徐脈性不整脈
正常よりも心拍が遅くなる不整脈を徐脈性不整脈といいます。
一般には、1分間の心拍が50回以下になると徐脈と診断されます。(*4)また、心拍と心拍の間隔が長くなる場合も徐脈とされます。
徐脈性不整脈になると、次のような症状が現れます。
- 息切れ
- 足のむくみ
- めまい
- 失神
(*4)一般社団法人 日本循環器学会
徐脈性不整脈の疾患
徐脈性不整脈には、主に以下の疾患があります。
- 洞不全症候群
- 房室ブロック
・洞不全症候群
右心房にあり、「人体のペースメーカー」ともいわれる洞結節に異常が生じ、一時的に電気信号が送られなくなったり、少なくなったりする不整脈 のこと。
洞結節とは心臓を動かすための電気信号を生み出す部分であり、ここに異常が起きることで心拍が遅くなる。
突然、心拍が5〜10秒停止し、失神発作やめまいを引き起こしたり、安静時の心拍数が30〜40拍/分となって、体を動かしたときに息切れを起こしたりする。
症状がなければ基本的に放置しても良いが、症状がある場合にはペースメーカーによる治療が必要とされている。(*5)
(*5)公益財団法人 日本心臓財団
・房室ブロック
心房と心室の間にあり、心拍の電気刺激を伝える心筋のことを「房室結節」といい、この働きが悪くなることを房室ブロックという。
本来、洞結節で作られた電気は心房を収縮させ、房室結節を通って心室へ行くが、電気信号を受け渡す房室結節の細胞に異常が生じることで信号の受け渡しがうまくいかなくなり、徐脈を引き起こす。
重症度により、1度、2度、3度房室ブロックに分類され、2度、3度房室ブロックは注意が必要。洞不全症候群と同じく、心拍が突然5〜10秒停止し、失神発作やめまいを引き起こしたり、体を動かしたときに息切れを起こしたりする。
3度房室ブロックは、完全房室ブロックとも呼ばれ、突然死につながる恐れがあるため危険とされている。
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3.期外収縮
期外収縮とは、規則正しい心拍の中にときどき速い心拍が入り込むことをいいます。
健康診断などで不整脈を指摘された人の多くが、この期外収縮を発症しており、まったく自覚症状がなく、健診で初めて気づいたという人も少なくありません。
特に、期外収縮が連続せず、単発で起きていたり、出現頻度が少ない場合には、自覚症状がなかったり、症状の訴えが少なかったりすることがあります。(*6)
期外収縮で症状が現れる場合には、以下のようなことが起こります。
- 胸がドキドキする、動悸がする
- 胸が一瞬つまずく
- 胸がつまる
- 胸に空気が入ったような感じがする
(*6)日本循環器学会 / 日本不整脈心電学会合同ガイドライン「2022 年改訂版 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン」
期外収縮の疾患
期外収縮の疾患には、以下のものがあります。
- 上室性期外収縮(心房性期外収縮)
- 心室性期外収縮
・上室性期外収縮(心房性期外収縮)
心房や心房と心室の接合部に発生源があるものを上室性期外収縮という。
単発であればほどなくして正常な脈に戻るため、通常、治療の対象にはならない。
だが、電気信号が短い間隔で連続的に数発発信されると、やがて心房細動に移行することもあり、注意が必要とされている。
・心室性期外収縮
心室に不整脈の発生源があるものを心室性期外収縮という。
ホルター心電図検査を行うとほとんどの人に見られるくらい、一般的であるが、心室性期外収縮の数が1,000発/日以上になると、正常脈拍の人に比べ、突然死の可能性が2倍に上昇する。
また、10,000発/日以上になると、20%の患者において心機能の低下が見られる。
心筋梗塞や心筋症など心筋の異常が原因で起きていることがあり、心室細動の前兆として発症し、突然死を招く場合もある。
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まとめ
このように不整脈にはさまざまな疾患があり、危険度も疾患によって異なります。
なかには手術が必要な、重篤な状態を引き起こすものもあります。
健康診断で初めて不整脈があることに気づく人も多いと思いますが、自己判断で「治療不要」と決めず、まずは「治療の必要があるか」「致死性の危険な不整脈ではないか」など、専門医に診察してもらうことが大事。
また治療が必要な場合には、疾患によって治療法が異なるため、自覚症状やライフスタイルなどに応じて、最適な治療法を選択しましょう。
不整脈のことでお悩みでしたらご相談ください
現在では、医療技術の進歩や治療方法の多様化により、症状に合った治療を選ぶことができ、多くの不整脈が治癒可能になっています。
しかし、不整脈の中には突然死につながる危険なものもあり、その「前兆」に気づくことが非常に重要です。
健康診断で指摘を受けた方や、息切れ・胸痛・めまいなどの症状に悩まされている方は、まずは適切な診察を受けて、ご自身の不整脈の種類や程度を理解することから始めましょう。
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