ときには命のリスクもある不整脈の原因とは?
不整脈は、なんらかの原因により、脈拍の回数が増えたり、減ったり、不規則になったりする状態のことをいいます。
不整脈を引き起こす原因にもさまざまなものがあり、なかには生活習慣を改善するなど、自分の努力である程度、予防効果を期待できるものもあります。
ここでは、不整脈の原因としてよくあるものについて、概要を解説します。
(*1)一般社団法人日本循環器学会
不整脈を引き起こす原因としてかんがえられるもの
- 心疾患
- 心疾患以外の疾患
- 生活習慣
- 薬剤の影響
- 遺伝
1.心疾患
不整脈は、以下の心疾患と関係して起きることが知られています。
- 心筋梗塞
- 狭心症
- 心臓弁膜症
- 心不全 など (*2)
なぜ、こうした心疾患が不整脈を引き起こすのでしょうか。
たとえば、心筋梗塞が起きると心臓を動かす筋肉である心筋に血液が届かなくなり、心筋が壊死してしまいます。
また、狭心症も似たような疾患で、心筋に供給される酸素が不足し、激しい胸の痛みを引き起こします。
このような状態になると、心臓は正常なポンプ機能を果たせなくなり、ブルブル震えた状態になって、頻脈性不整脈を発症しやすくなります。
特に、致死性の不整脈である心室頻拍や心室細動を引き起こす最大の要因は急性心筋梗塞であり、心筋梗塞は突然死の大きなリスクとなっています。
また、心筋梗塞を起こしたあとはさまざまな不整脈を発症しやすくなり、特に急性期(発症4時間以内)には、心室性期外収縮、徐脈性不整脈、心室細動、心室頻拍などの不整脈を引き起こすことが多く、注意が必要です。(*3)
その他の心疾患においても、心臓の機能を低下させ、不整脈を招くリスクが高くなります。そのため、不整脈の予防には原因となる心疾患の治療を第一に行うことが必要になります。
(*2)公益財団法人 日本心臓財団
(*3)埼玉不整脈ペーシング研究会 最新の不整脈ニュース第6号
2.心疾患以外の疾患
心疾患以外の疾患が原因となって不整脈を発症する場合があります。
一例として、以下のものが挙げられます。
- 高血圧
- 甲状腺異常
- 肺疾患
なぜ、これらの疾患が不整脈の原因となるのでしょうか。
たとえば高血圧になると、心臓はより強い圧力で血液を送り出さなければならなくなるため、心臓の負担が増えます。
そのため、心臓が大きく肥厚したり拡張したりすることになり、不整脈が起こりやすくなります。
特に高血圧と心房細動の関係はよく知られており、心房細動は脳梗塞を招く重要な危険因子です。
心房細動が生じると、心臓で血の塊(血栓)ができやすくなり、それが脳の血管を詰まらせて脳梗塞を発症させます。
このように、心臓が原因となって起きる脳梗塞を心原性脳梗塞症(ノックアウト型脳梗塞)といい、他のタイプの脳梗塞に比べて重症になりやすいという特徴があります。
心原性脳梗塞症は脳梗塞全体の20〜25%を占めており、心房細動は加齢とともに有病率が増えることから、超高齢化が進む日本では心房細動を起源とする脳梗塞による突然死には警鐘が鳴らされています。(*4)
そのほか、甲状腺ホルモンの異常は心臓を刺激し、不整脈を引き起こす可能性があることがわかっています。
また、肺と心臓は非常に関係の深い臓器であることから、肺疾患があると相対的に心臓の機能も低下します。そのため、不整脈を引き起こしやすくなるのです。
(*4)社会医療法人財団 白十字会
3.生活習慣
日常的な生活習慣が不整脈の要因となる場合があります。
一例として、以下のものが挙げられます。
- ストレス
- 睡眠不足
- 過労
- アルコールの多飲
- 喫煙
そもそも心臓の働きをコントロールしているのは、自律神経です。
交感神経が優位になると心拍数が増え、呼吸が荒くなりますし、反対に、副交感神経が優位になると、心拍数は落ち着き、呼吸も穏やかになります。
しかし、ストレスを感じたり、睡眠不足に陥ったり、過労が続いたりすると交感神経が過剰に優位になり、頻脈や期外収縮が発生しやすくなります。
またアルコールの多飲や喫煙でも交感神経が優位になるため、不整脈が起きやすくなります。
4.薬剤の影響
心臓病以外の病気に対する薬剤が不整脈を引き起こす場合があります。
主に、以下の薬剤に注意が必要とされています。
- かぜ薬
- 精神病薬・抗うつ薬
- 抗不整脈薬
- β遮断薬
これらの薬剤は不整脈を増悪させたり、新たな不整脈を発生させたりする可能性があるので、服用には注意が必要です。
特に気をつけたいのは、抗不整脈薬です。
不整脈を抑えるはずの薬が、不整脈を発生させたり増悪させたりするのは矛盾のようにも思えますが、 抗不整脈薬を不適切に使用することで心機能が抑制され、予後を悪くする場合もあります。(*5)
現在、抗不整脈薬は心筋梗塞の既往がある患者には禁忌とされています。
また、不整脈の治療に用いられる薬剤は、他の薬剤の影響を受けることが多いことがわかっています。
そのため、医療機関で薬を処方された場合には、抗不整脈薬を常用していることを医師に伝え、指示を仰ぐことが必要です。(*6)
(*5) 循環器フォーラム2010 不整脈薬物治療フォーラム「心不全を有する心房細動の薬物的治療法の戦略とその実際」
(*6)一般社団法人日本循環器学会
5.遺伝
不整脈のなかには、遺伝が関係しているものもあります。遺伝性不整脈の一例には、以下の疾患があります。
- 先天性QT延長症候群(LQTS)
- 後天性(二次性)LQTS
- ブルガダ症候群
- 進行性心臓伝導欠損(PCCD, Lenegre病)
- 家族性徐脈症候群(洞機能不全症候群、房室ブロック)
- カテコラミン誘発性多形性心室頻拍(CPVT)
- QT短縮症候群(SQTS)
このなかで現在、もっとも研究が進んでいるのは先天性LQTSです。
現在15個の原因遺伝子が同定されており、遺伝子検査による診断率は50〜70%と高くなっています。他の不整脈でも研究が進んでおり、「両親がこれらの不整脈を発症している」というような場合には、遺伝子検査を受けることで、治療や予防に役立てることができます。(*7)
まとめ
このように、不整脈の原因は非常に多岐にわたります。
一般に、心疾患に由来する不整脈は危険なものが多く、反対に、生活習慣に由来する不整脈は治療の必要性がない場合が多いとされています。
しかし、不整脈を放置すると心機能が次第に衰え、いずれ危険な不整脈に移行してしまう場合もあります。
不整脈の原因を理解し、予防に努めるとともに、「動悸がする」「息切れがする」など、不整脈が疑われる兆候が見られたら、早めに専門医の診察を受けるようにしましょう。
不整脈のことでお悩みでしたらご相談ください
現在では、医療技術の進歩や治療方法の多様化により、症状に合った治療を選ぶことができ、多くの不整脈が治癒可能になっています。
しかし、不整脈の中には突然死につながる危険なものもあり、その「前兆」に気づくことが非常に重要です。
健康診断で指摘を受けた方や、息切れ・胸痛・めまいなどの症状に悩まされている方は、まずは適切な診察を受けて、ご自身の不整脈の種類や程度を理解することから始めましょう。
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