不整脈の概要と心臓の機能
不整脈とは、「脈が乱れること」をいいます。
正常な脈とは、「安静時に50〜100回/分、規則正しく打つ脈」のことを言います。
それ以外の脈拍を不整脈と言い、脈の速度によって、「頻脈(脈が速い)」「徐脈(脈が遅い)」に分類されます。
脈が乱れることは、決して異常なことではありません。
運動をしている時や運動後、あるいは興奮したときなどに、脈拍数が100回/分以上になることは生理的な反応であり、不整脈には該当しません。
健康診断で必須の心電図検査で不整脈を指摘され、ドキッとしたことがある人も多いと思います。(*1)
実際のところ、健康な人でも90%が不整脈を起こしているとされており、不整脈を指摘されたからといって、すぐ命に危険が及ぶというわけではありません。
心臓は1日に約10万回、ポンプのように収縮と拡張を繰り返しており、この活動によって、全身へ血液を送り出しています。
通常、この収縮と拡張は規則正しいリズムで行われていますが、ときにはそのペースが乱れることがあります。これが「不整脈」です。
原因にはさまざまあり、運動や緊張などもその一因。「不整脈だからといって、必ずしも危険な状態である」とは言えないのです。
一方、なんらかの病気が引き金となって不整脈を引き起こしている場合もあります。
なかには命のリスクを伴う不整脈もあり、この場合には、一刻も早く適切な治療を行う必要があります。
つまり、健康診断などで不整脈が指摘されたときに大切なのは、その不整脈が致死性の危険なものか、そうでないのか、適切に見極めることなのです。
(*1)公益社団法人 日本人間ドック学会「人間ドック (Ningen Dock)」2010 年 24 巻 5 号 p. 1067-1078
不整脈の3つの分類
不整脈には以下の通り、3種類あります。
一般に、心拍数がおおよそ50回/分以下を徐脈、おおよそ100回/分以上を頻脈と呼びます。(*2)
極端に脈拍が速くなったり遅くなったりすると、心臓は全身へ十分な血液を送り出すことができません。
そのため、体にさまざまな障害が生じてしまうのです。
また、期外収縮については、心拍数の定義に明確な定めはなく、心臓の拍動が予定された周期よりも早期に興奮し、規則正しい正常な脈に混じって、ときどき速い脈が入り込む状態のことをいいます。(*3)
3つのタイプの不整脈のうち、最も多く見られるのが期外収縮です。
その多くは、心配のいらない期外収縮です。
30歳を過ぎると多くの人に起こっているとされ、めまいや失神などの自覚症状がなければ、治療の必要はありません。(*4)
(*2)一般社団法人日本循環器学会
(*3)公益財団法人日本心臓財団
(*4)一般社団法人大阪府医師会
不整脈の原因は心疾患や生活習慣などが引き金に
不整脈の原因はさまざまあり、主に、以下のように分類されます。
1.心疾患
心筋梗塞や狭心症、心臓弁膜症、心不全などの心疾患
2.その他の疾患
高血圧、肺疾患、甲状腺異常など(*5)
3.生活習慣
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不整脈の症状で注意すべきもの
不整脈を発症すると、次のような症状が見られることがあります。
1.頻脈性不整脈
- ドキドキする(動悸がする)
- 胸が苦しい
- さらに動機が激しくなるとめまい、冷や汗、吐き気などを伴う。ときには意識を失う
2.徐脈性不整脈
- 体を動かすと激しい息切れがする
- さらに症状がひどくなると、気を失う、目の前が暗くなる、めまいがする、などの症状が現れる
徐脈性不整脈についてもっとみる
3.期外収縮
- 一瞬ドキッとする、一瞬胸がつまる感じがする、胸がなんとなく不快になる、胸痛がある
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特に注意したいのは、以下のような症状です。
命を脅かす致死性の不整脈の予兆として、これらの症状が見られることがあります。
- 動悸
- 息切れ
- めまい
過去に、心電図の検査を受けたときに異常を指摘されたことがあり、かつ、気を失ってしまうようなめまいが起きる人は、注意が必要です。
命のリスクにつながる可能性があるので、早めに病院で診察を受けましょう。
ただし、気をつけなければならないのは、不整脈を発症しても、必ずしも自覚症状があるわけではないということです。
しかし、不整脈が長期間持続すると心臓の働きが悪くなることがあります。
そのため、自覚症状がなくても健康診断などで不整脈を指摘された場合には、念のため、検査を受けることが必要です。
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不整脈の検査・診断方法
一般に、不整脈の有無を確認するために、病院では「心電図検査」が行われます。
心電図とは、心臓の電気活動をグラフに表したもの。
そもそも心臓は、収縮と拡張を繰り返す際に微弱な電気を発生させます。
この電気興奮を波形として記録したものが心電図であり、波形に乱れがないか、リズムよく刻まれているか調べることで、心臓の働きを確認することができます。
病院で行われている心電図検査には、主に以下の4つの方法があります。
- 12誘導心電図
- ホルター心電図
- 心臓電気生理学的検査(EPS)
- 植込み型心電計
そのほか、最近では自宅で手軽に心電図を記録できるものとして、高性能の「携帯型心電計」も市販されています。
また、Apple Watchでも手軽に心電図を取ることができ、「動悸やめまいが起きたとき、すぐに心電図を記録できる」として、不整脈の心配がある人に人気を集めています。
重症度やリスクに応じて選択する不整脈の治療法
不整脈の治療法は、不整脈の種類や症状、重症度によって選択されます。
治療法は大きく分けて、「薬物療法(投薬による治療)」と「非薬物療法(薬を用いない治療)」に分類されます。
1.薬物療法
不整脈の治療では、主に「心拍数を遅くする薬」「不整脈を起こさないようにする薬」「血液を凝固させずサラサラにする薬」が用いられます。
これらの薬は頻脈性不整脈に対して用いられます。
2.非薬物療法
非薬物療法にはペースメーカーや植込み型除細動器(ICD)などの医療機器を体内に植込むデバイス治療、カテーテルアブレーション、外科的心臓手術などがあります。
ペースメーカーによる治療は徐脈性不整脈に対して行われ、植込み型除細動器による治療は頻脈性不整脈に対して行われます。
また、カテーテルアブレーションや外科的心臓手術は、不整脈の発生源や回路を完全に遮断することで不整脈の根治を目指す治療法です。
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命の危険もある不整脈が原因となって起こる深刻な疾患
不整脈が進行すると動悸やめまい、失神などが激しくなり、日常生活の質を低下させてしまいます。
それだけでなく、心臓の働きが衰えることで、以下のように重篤な疾患を招くリスクがあります。
これらの疾患が発症した場合には命の危険を伴うことも。そのため、不整脈はできるだけ早期に、適切な治療を行うことが肝心です。
- 脳梗塞
- 心筋梗塞
- 心不全
不整脈で受診すべき診療科と医師の探し方
健康診断などで不整脈の可能性を指摘された場合には、できるだけ早めに循環器内科を受診しましょう。
できれば不整脈を専門に扱う医療機関だと、詳細な検査を行うことができるため、万が一危険な不整脈が見つかった場合でも早期発見・早期治療が可能になります。
また、「心臓がドキドキする」「ときどき胸が苦しくなる」など、不整脈の初期症状が見られる場合には、まずかかりつけ医に相談し、さらに専門的な検査が必要かどうか判断してもらっても良いでしょう。
まとめ
不整脈は決して珍しい疾患ではありません。しかし、だからといって放置して良いものでもありません。
一度でも健康診断で不整脈の可能性を指摘された場合には、できるだけ早めに専門医の診察を受けること。その際には「いつから、どんな症状を、どの程度自覚しているか、病気の既往はないか、家族に不整脈を持っている人がいないか」などを正確に伝えるようにしましょう。
不整脈のことでお悩みでしたらご相談ください
現在では、医療技術の進歩や治療方法の多様化により、症状に合った治療を選ぶことができ、多くの不整脈が治癒可能になっています。
しかし、不整脈の中には突然死につながる危険なものもあり、その「前兆」に気づくことが非常に重要です。
健康診断で指摘を受けた方や、息切れ・胸痛・めまいなどの症状に悩まされている方は、まずは適切な診察を受けて、ご自身の不整脈の種類や程度を理解することから始めましょう。
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